世界遺産知床。半島で生きる動物の映像は、小さい頃の数少ない記憶。北海道で一番訪れたかった場所へ向かう。
4時半に起き、ホイールの振れ取りをやってみる。加減が難しい。完全に振れを取ることはできていないが、小さくはなったので完了とする。MSRのテントの方が話しかけてくれた。夫婦でキャンプをしていた様だ。撤収スピードは鬼早かった。クリオネキャンプ場を後にする。
ウトロへの道中、「天に続く道」という直線道路がある。天に続く、ということは坂で、完全に寄り道なので迷ったが、結局向かってしまう。段々と伸びる坂を汗だくになりながら押し登り、やっと道のスタート地点までたどり着いた。
まっすぐ伸びる道は水平線近くまで続き、確かにその表現がぴったりだ。
坂を下り経路へ戻る。風も雲もなく、半島の縁を沿う道は気持ちが良く、普段出ない速度域で安定して進む。オシンコシンの滝が見えてきたら、ウトロへはもうすぐそこだ。写真で見たことがあるが、水量が多く迫力がすごい。飛沫が展望台にまできて地面はずぶ濡れ。
ウトロに到着した。看板が多く建っている。道の駅ウトロシリエトクに自転車を停めて中に入る。シリエトクは知床の元。お土産品も豊富にある。これから向かう知床峠は700mの高さまで登るキツい峠、まずは飯を食べる。向かいの「荒磯料理熊の家」の荒磯丼はとても美味かった。
峠へ向かう前に、お土産を買う。こういうところでは土産は買うと決めているので、予算を少し高めに色々買う。知床のtシャツを買い、着替えていざ峠へ。
まずは知床自然センターまで、一気に始まる登りをなんとか乗り越える。
ここには映像資料コーナーがあるのだが、コロナで閉館しており誰もいない。ここで道は分岐する。分岐先は五湖で、寄り道だ、しかもガイドなしでは一湖しか行けない。それでも見たいと感じ、分岐に入る。
勾配も長さも想像以上の下り坂、同じ道をまた戻る事、戻ってから峠の本番だという事を考えると、五湖まであと少しの所で始まる坂で引き返すことを決めた。
このまま進んでは羅臼に辿り着くのが夜遅くになってしまう。分岐まで40分近くかけて戻る。
やっと分岐に戻った時には、用意していた飲料が残り200mlくらいまで減っていた。直射日光とエグい坂で身体中の水分が飛んでいく。しかもコロナでセンターが閉鎖しているせいで、飲料補給の手段がない。かと言ってこのままウトロに引き返すわけにもいかない。残りの分量で500m峠を登っていくしかない。
4-6%の坂が約10kmも続く。夕暮れで日差しが弱くなったことが幸いして、自転車を押しながら少しペダルを踏むのを繰り返しても喉の渇きをあまり感じない。横手の茂みが風で音を出す。もしかして動物なのではないかとビビりながら1時間半かかりようやく峠を上り切った!
正直閉鎖している施設は見たかったけど、峠から見える羅臼岳、根室海峡、国後島をみれただけでも家を出てよかった。
知床が世界遺産に登録された理由は、流氷がもたらす豊かな生態系。景観に関しては登録基準には合わなかった。冬から春がここを訪れるのに一番の時期だと感じた。今回は見ることはできなかったが、また来ることは確実だ。
峠の石碑で写真を撮る。小さな虫が脹脛に止まり、痛みが走る、噛まれた。太陽が沈む、さっさと羅臼まで下らないければ。羅臼までの下り坂は急坂急カーブの連続。よそ見をしようものならあっという間に崖に突っ込む。しかし羅臼岳が綺麗でその気になってしまいそうになる。半分まで下った所でエゾジカ2頭が突然出てきた。1頭出てきたらもう一頭いると思え、とどこかに書いてあった気がするが、いきなり2頭出てくるとは。デカくて、あれと当たったら大怪我間違いなしだろう。
ようやく羅臼まで下ってきた。野営場も、ビジターセンターも閉鎖している。今日は羅臼から北に行ったところの二つ岩キャンプ場を予約している。「熊の入った家」というライダーハウスが併設されている。突き当たりを左に曲がり、相泊方面へ。海の向こうに国後島がはっきり見える。
キャンプ場に到着し受付を済ませる。大らかなマスターさんから入り口に金魚がいることを教えてもらった。全く気が付かなかった。丁寧に施設の案内をしていただき、設営を済ませる。前室から国後を見ながら、飯を作る。
翌朝、ガスってなければ国後からの日の出が見れるとマスターさんは仰っていた。また明日も早起きだ、寝袋にくるまると疲れが一気に押し寄せ、そのまま眠った。
明日も無事であります様、気をつけます。