【24】東松島-神割崎

朝の冷え込みには意外に苦しまず、少し寒いと感じて目が覚めたのは5時。しっかり夜露はテントを濡らしていた。

いよいよリアス式海岸沿いに入る。今日は神割崎キャンプ場を予約してあるので、なんとしてでも夕方までには着かなくては。適当に水を拭き、畳んで出発する。

 

実は記事作成が結構溜まっている。時間順に、感じたことを書くだけなのだが、始めると長くなる、推敲すると時間がかかる、写真整理にも時間がかかる。けど溜まっているからといって適当に書きたくないので、石巻市のマックで2時間ばかし記事を書いた。

 

キリのいいところで終え、国道45号から外れ北上川沿いを東へ進む。到着時刻があるのでカメラを出さずに進んでいたが、慰霊碑が見え足が止まった。

f:id:RSSHAKE:20210430064207j:imageここは北上地区。津波の被害が甚大だった地域で、14の集落は壊滅的な被害を受けた。この慰霊碑が建つ場所は吉浜小学校の跡地で、ここで避難した児童や職員もいたそうだ。

慰霊碑には亡くなってしまった人々の御芳名が刻まれていた。年齢も刻まれており、中には一桁もあった。涙が止まらなかった。慰霊碑にはハマギクの刻印とイヌワシ像があった。故郷の花鳥は御霊を優しく守っていた。

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慰霊碑の鐘を鳴らし黙祷する。まだ涙がおさまらないが出発する。

 

きつい坂を越えてやっとキャンプ場に着いたのは15時半頃。景勝地神割崎の近くにあり、断崖と水平線と海風を感じることができるすごい場所だ。本当はテントを設営したら自転車のメンテナンスをしようと思ったけれど、明日の朝に回すことにした。フリーサイトの一番奥にテントを構え、場内と神割崎を見に行く。場内には岬がいくつかあり、今日は風が強かったので激しい波と多数のウミネコが見れた。

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弱った鯨が打ち上げられ、その所有を隣接する村が数日争った。ある夜大きな落雷があり、それは岩を一文字に裂いた。裂痕は境を示すような形で、それを見た村民は争いをやめた。これが神割崎の由来だそうだ。

階段を降りるとその岩が見えてくる。綺麗に縦に割れている。割れ目には波が勢いよく当たり大きな飛沫をあげる。

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三脚を構えている人がいた。何を待っているのだろうと思って考えるが、答えが出ない。一度階段を登りキャンプ場に戻ろうとしたが、引っかかりを感じたので意を決して引き返し、聞いてみた。月を待っているそうだ。聞いてみてよかった。階段を登ってもう一回岩を見ているともう1人の人とすれ違った。旅をしていることを伝えると、今日はあの割れ目から満月が出てくる日だということを教えてくれた。月の出まではあと1時間程。スマホの電池が切れそうなので一旦戻る。

 

月の出10分前。2人のカメラマンさんはバッチリカメラを構えていた。どこで見るべきかわからずあたふたする。赤く丸い満月が本当に割れ目から出てきた。しかも雲が全くかかっていない。綺麗すぎて本当に驚いた。

f:id:RSSHAKE:20210430064714j:image自分が立っている場所が2人の邪魔になっていないかとても気になってしょうがない。

 

後方の岩に立ち写真を撮っていると、三脚を使いますかとカメラマンさんが声をかけてくれた。しかし三脚を使用したことがなく、大丈夫ですと答えた。今まで三脚を使用したことがないのをとても後悔した。入門書をみて覚えた設定を色々いじってみながら、息を殺してシャッターを切る。月は段々と登っていき、赤から白へ眩しく輝きを見せる。海面はそれを反射している。めちゃくちゃ綺麗だ。こんな綺麗な月をみたのは初めてだ。

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カメラマンさんも、ここまで綺麗に出るのは本当に珍しいと仰っていた。写真を見せてもらった。すごい綺麗な写真で思わず声が出てしまう。

 

月は割れ目から外れ、カメラマンさんも撤収する。帰り際、缶コーヒーを頂いた。もし最初の引っ掛かりをそのままにしていたら、この月を見ることはなかっただろう。教えて頂いた事に感謝を伝え、解散した。

 

テントに戻り夕飯を作る。前室から見える海は月明かりを反射している。先日野営した時に買って飲むのを忘れた発泡酒があった。贅沢微糖もある。いつもと変わらない夕飯だが、ずば抜けて美味い。

今日の事は忘れないと思う。

 

北上地区とあの月を思い出しながら寝たのは0時頃。明日も無事でありますよう、気をつけます。

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